偶然に見つけた通信講座だった。
そしてこれまた、たまたま選んだに過ぎない「社会保険労務士講座」だった。
だが教材が届いた日、「俺は自分を変えられるかも知れない」
そんなかすかな予感を感じた。
俺がこの講座を受けることは誰にも知られていない。
途中でやめようが、実際に試験を受けようが受けまいが
どうでもいいことだ。
だが、教材と一緒に送られてきた「戦略立案編」というテキストを見たとき、
合非そのものではなく、この通信講座を続けることで
何かが変わるような気がしたのだ。
送られてきた教材は大きく分けると
講義DVD、基礎知識のテキスト、問題集だった。
DVDはその法律や単元を最初に理解するために使うものだった。
カメラ目線で語りかける講師のスタジオ収録講義は、
こんな俺にも理解しやすかった。
まず俺は新しいことを覚えるとき、この講義DVDを3回見た。
それからそれに対応するテキストを読んだ。
テキストは重要語句や覚えるべき語句が色分けされていたり
覚えやすく表組みになっていた。
俺はその語句をノートに書き写したり、声を出したりしながら暗記した。
そしてちょっと覚えたかな?と思ったらすぐにチェックテストをやった。
チェックテストは比較的簡単で答えやすい問題ばかりだった。
俺は同じところを何遍も繰り返した。だから満点もわりあいすぐに
取れるようになった。
「へえ、俺にもできるんだ…」たとえ簡単な基本問題でも、満点を
何度も取るうちに達成感のようなものを感じるようになってきた。
先に進むことより、前にやったことを何度も繰り返した。
なぜかと言えば同じ事をやるわけだから満点が取りやすい。
それが気持ちよかったのだ。
さらにもう一つ夢中になったことがある。
それはパソコンを使った練習問題システム「道場破り!」だ。
はっきり言おう。これはゲーセンで遊んでいるのと同じ感覚で
基礎知識が復習できる、ストリートファイターのようなゲーム学習システム
だった。フォーサイトが独自に開発したものらしく
受講生はパスワードさえ入力すれば、何度でも無料でやれるのだ。
ひどいときは朝から晩まで1日中この「道場破り!」をやっていた。
ゲームに勝つ快感と、知識を覚えていく快感。この2つが重なって
1日中パソコンに向かう手が止まらなかった。
このゲームをクリアするために勉強しているのではないか?とさえ
思えるくらいだった。
講義DVDと「道場破り!」
俺の試験勉強にはパソコンが欠かせなかった。
だが無意味なネットサーフィンを繰り返していた日々に比べて
何かが自分の中に蓄積されていくのがわかった。
目が疲れた時はベッドの上で目をつぶりながら、テキストに書かれていた
重要事項を暗唱した。
あれほど長いと感じていた1日が、どんどん過ぎていくようになった。
そして、10冊もあったテキストは面白いくらいに進んでいった。